学会に行って来た BMB2007

 ずいぶんご無沙汰ですが最近の報告から。今週は横浜で分子生物と生化学の合同年会。水曜に日帰りで行ってきました。
 あわせて1万人以上の参加者らしくポスター会場は日替わりで1000枚以上のポスター。端に立つと向こうは見えない。サッカーのフィールド二面くらいは軽くとれそう。無数の会場に分散しての講演でどこに行って良いのやら。軽量化のために分厚いプログラムから12日のページのみを切り取って持参することにしたのだが、参加受付をすますと更に分厚い予稿集を渡された。「もう要りません」といったのだが受付の女性が困った顔で再度渡してくれたのを断り切れず(弱気!)仕方なく終日持ち歩くことになった。おかげで怪我をしている右腕の調子がまた悪くなりましたよ!ここまで巨大になると自分の居場所を見つけるのが大変。人混みで酔いそうになりました。

 この日の用件は三つ。まず午後に座長を務めるセッションで話す予定の共同研究者Sさんと飯を食いながら打ち合わせ。しかし早速トラブル発生。携帯を自宅に置き忘れてしまい彼と連絡が取れなくなってしまった。こんなデカイ会場で知り合いを発見する事は奇跡に近い。ラボに電話して連絡を取ってもらおうとするが彼の携帯番号などわからない。大いにあせったのだが冷静に考えてまず彼のラボのポスター発表に向かう。そしたらなんと彼の方から声をかけてくれて一件落着。食事をしていたら隣に座ったのが粘菌のU先生。甲殻類のSさんとマイナー生物どうしで大いに話が盛り上がった。さて打ち合わせ後に午後のセッション開始。プログラムは「発生・再生」となっているが医学部系の骨形成の話が5題続いていきなり骨の無い生き物ミジンコに移る。聴衆がみんな出ていってしまったらどうしようかと内心心配だったのだが席を立つ人も少なく無事に受け持ちのセッションは終了。

 会場の外では二件目の用件である卒業生のSさんとの相談。学位を取った後ポスドクを経て働いていた彼女からいきなり「起業しました」言われて耳を疑った。しかし話を聞いてみるとそれは冗談ではなく生物系の研究室でのデータ整理を補助するデータベースサービスだそうだ。デモを見せてもらうがかなりうまくデザインされておりラボに戻ったらテストさせてもらうことにした。

 さて第三の用件は発表を聞くこと。ポスター会場に戻り発表を見て回る。実は朝一番に端から端まで歩いて概要を把握して起き、チェック項目を決めていたのである(しんど!)。アポトーシス細胞に提示されて貪食細胞の標的になる分子を同定して話は見事。これをやった彼は少しうちで細胞の見方をならいにきていた事も有りいい話にまとまってうれしいです。
また磁性細菌のマグネトソームの話も丁寧に説明してくださってありがたかったです。バクテリアの仕事はメタゲノムのプロジェクトもあって、途方も無くおもしろい現象がまだ際限もなく見つかってきており、病原体としての研究価値も上がってきているので細菌学は第二の隆盛期を迎える予感がします。膨大な発表の中のごくごく一部にすぎませんが他にもいろいろ役立つ話を伺うことが出来て良かったです。

 二つの大型学会の合同年会はこれからも予定されており合併を望む人たちまでいるそうだ。「統合でメガバンクならぬメガソサエティー誕生」などと冗談を言っている場合でもなさそう。なんのための学会なのかを原点に戻って考える必要がある。学会には分野の裾野を広げることと、研究の奥深さを追求する事の目的のバランスをとる必要が有り、その最適点で至適なサイズがきまるだろう。ともかく私にとっては10カ所も同時進行でセッションが開かれる学会は巨大すぎて手に負えない。分子生物学を共通言語として、1000人を超えない範囲のサブ集会が2−3日ずつ重複して連続して開かれるような組み方が出来ないものだろうか。老舗の学会でも流動性を失い退潮傾向にあるところも知っている。メンバー流動性を保ちつつ活動を続けるのが良いようにおもう。学会役員は会員の投票で決まるのだが「あ行」の名字を持つ人が結構多い。組織票もあるように思えるのだが少ない投票率では会員の意志を汲み上げる事は難しく、まずは皆さんしっかり考えて投票することをお忘れ無く!(「あ行」の役員さんからの心からの訴えでした)。

 ともかく6時半まで話し続けてから羽田に向かい帰宅の途についた。日帰り学会でも充実でした。