素数ゼミの真実

ここで発見した加藤教授の
おことば。

人間の世界では素数はあまり大切にされていません。実際、世の中で素数で悩んでいる人は少ないのです。例えば、道で、調子が悪そうな人に『もしや、素数のことでお悩みですか』と聞いても、『いま忙しいからほっといてください。』といわれかねません。しかし、セミ素数を大切にしています。十七年ゼミや十三年ゼミはいますが、十二年ゼミや八年ゼミはいません。これは、もし例えば十二年に一回大発生するセミがいたとすると、それを食べる生物は三年周期や六年周期で発生すれば、このセミを食い尽くすことができるからです。

 人間の世界では素数に命をかけている人は少ないですが、セミ素数に命をかけているのです。だからセミが将来進化して人間と同じような知能を持つと、みんな素数素数言いながら道を歩いているでしょう。

 素数蝉の真実をついていて感動。複数の年をカウントするカレンダーを内蔵する生物がいると考える。大きな素数を単位としたカレンダーを持っていれば、地下での眠りから覚めた時に捕食者に出くわすリスクが減少する。しかし数年以上に渡る周期性を保つのには年数が長ければ長いほど生物にとって正確なカレンダーが要求されて困難が伴う。蝉は捕食者の裏をかくためにより大きな素数の年代を測るカレンダーを内蔵するコストをかけたのだろうか。大きな素数の年数を正確にカウントできる体内カレンダーとはどのようなものなのか?羽化ホルモン分泌の上流に位置するものなのか?神経ペプチドの分泌を引き起こす神経経路に原因があるとすれば、神経回路の配線に「素数」をコードすることはできそうだぞ。謎は尽きない。

 この加藤教授のような異次元に突き抜けたタイプの研究者は大学時代の数学系の友人を含めても見たことはない。生物学の世界では、成功するタイプに1)じっくり深く考える人(探究型)、2)何事もそつなく出来る人(秀才型)、3)平凡だがねばり強く目標を達成する人(努力型)と分ける事が出来る。生物学では白黒正確な判断が付きにくい結果をバランス良く判断して仕事をすすめていく場面が多い。そのアバウトな判断をたしかなものにするのは常識に支えられた雑駁な知識がものを言うからだと思っている。数学の場合、白黒をはっきりさせる作業を狂気の淵を見るまでとことん打ち込むためには「おかしな」性格もありなのだと思う。