クライマーズコンディショニングブック

加齢とともに体は言うことを聞かず、柔軟性は下降、俊敏性など跡形もない。それでも山に行き岩にしがみつきたい人間は肉体に向かい合い、故障に付き合うほかはない。私と同じような悩みを抱えたベテランクライマーでガイドのガメラ菊地敏之氏による一冊。本書には触れられていないが菊池氏本人も数えきれない怪我を体験し、それでも登ることをやめない1人である。

 本書はアスリートとしてのクライマーが心得ておくべきコンディショニングの基礎を多数の項目に分けて系統だって整理している。クライマーとして必要とされる肉体的能力(持久力、筋力、パワー、運動神経、筋協調性など)をクライミングの動きに即して解説している。菊池氏の長年の指導者としての経験が生かされている。実に多彩な概念をよく研究して、自分のものとして理解し、読者にわかるように整理したものと感心するばかりである。

 後半は体の部位別の筋肉、骨格の構造と故障のパターン、調整方法が整理されている。100を超えるトピックの選択は的確で、各項目はすべて図版を含む見開き2ページに簡潔にまとめられている。テーマと書き込む内容の選択に相当な時間と手間をかけたのだろう。

 一つ難を言うと各項目が短いために調整の仕方などは十分に解説が行き届いていない。分量から考えて無理もないことであり、本書はケース別の辞典として使い深い理解には指導者のアドバイスを仰ぐか、専門書に進むべきだろう。

  老若男女、すべてのクライマーが所持して読み続けるべき一冊。

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