石屋川トラック事故

9月3日の朝。出勤しようと準備しているとサイレンの音が聞こえてくる。自転車で出かけるといつも通る交差点前に警官が立ち、封鎖・通行止めの処置をはじめていた。様子を見ると交差点には大破した乗用車が停止しており、歩道に2名うずくまった怪我人が介抱されている。通りがかったおじさんが「トラックが川に落ちている」と話している。現場の邪魔は出来ないのでそのまま迂回して職場に向かった。その後のニュースでは反対車線にはみ出したトラックが乗用車と衝突して川につっこんだと報道されていた。現場にいたる道は六甲山からの長い下りなのでブレーキが壊れて制御を失ったのだろう。

 現場は終日通行止めだったがその夜私が10時過ぎに通ったときにはきれいに片付けられ、石屋川の中にトラックの姿はなかった。この道は時々通るので事故の情況を想像しながら改めて走ってみた。六甲山のトンネルを出てケーブル駅を通過すると長い下り坂になる。鶴甲団地から神戸大工学部に至るまでの大きなカーブを越えると高羽の交差点に向かって長い直線の下り道になる。高羽町二丁目のY字路を左に曲がって現場に至る。このY 字路を曲がれたという事はトラックのコントロールがある程度出来ていたことになる。ここまでは通行量の多い道で両側は建物が建ち並ぶが現場の交差点からしばらくは左側の建物が途切れて石屋川と平行して走る。川とはいってもコンクリートと石垣で固められた水路である。現場の写真を見るとわかるがトラックは反対車線のガードレールにあたってからまっすぐに川に向かって突っ込んでいる。

 山道にはブレーキの制御を失ったトラックが突っ込んで停止できる場所が用意されていることがある。しかし住宅密集地の神戸市内でそのような場所はない。ここの下り道で周辺の住居が途切れるのは石屋川以外にはない。更に進むと山手幹線を渡り、国道二号線に合流するT字路で道は終わる。石屋川は天井川になっており現場をすぎるとトラックが走っていた道より高い位置となる。したがって川に突っ込める場所としてはピンポイントな位置で事故は起った。

 ここからは私の想像。長い下り坂のどこかでブレーキの制動を失ったトラックの運転手はハンドルさばきで車体をコントロールしつつどのように止まるかを計算していたのではないか。現場の道に詳しかったであろう運転手は交通量の多い山手幹線に至るまでにトラックをとめられる場所として石屋川を考えていた事だろう。そして突っ込める場所は極めて限られている事も。事故は乗用車と歩行者を巻き込んだ多重事故だったが死者はトラックのドライバーだけだった。この規模の事故としては損害の規模は小さい。現場の情況から見て取れるのは川への転落は偶然ではなくガードレールへの衝突の反動を利用して極めてわずかな隙間を縫って石屋川に向かって突入した運転手の技量だ。最後の数分間、運転手がなにを考えて行動したのかに想像を巡らせつつ彼の冥福を祈ります。

 

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上)現場の橋から六甲山側を見上げる。向こう側の横断歩道の先のガードレールが破壊されこちらに向かってタイヤ痕がまっすぐついている。下)海側を見下ろす。ガードレールから一直線に信号先の歩道を乗り越えて川に転落。

 

追記 (2019/09/17)

 新聞記事では現場に至るまでの暴走状態で縁石で減速しようとした形跡がある事。前輪がバーストしていた、また運転手は熊本在住の50台の方だとのことだ。

大型トラック前輪破裂後衝突か 神戸で多重事故8人死傷