いかがなものか

 私はこの言葉が嫌いだ。以前ある会合でこの言葉が発せられるのを聞いて生理的に受け付けられないことを実感した。ネット上でもこの言葉ってなんだか変じゃない?という意見を散見する。>google:いかがなものか

 ここではなぜ私がいやな感じを催すのかについて分析してみる。

まずは例文から
例1

麻生総務相は「給与が破格に高い。バス運転手が(年収)1400万円という数字もあり、いかがなものか。清掃職員では1300万円を超える者が6人いる」と述べた。
参院予算委 総務相「給与破格に高い」

例2

・・・総務省の香山充弘事務次官は28日の記者会見で、「市町村間でいさかいが起こった場合に裁くべき立場の方が、市町村間の混乱を招くような行為をするのはいかがなものかと思う」と批判した。
田中知事の投票は「混乱招く行為」 総務次官が批判

 一般に「いかがなものか」は反対意見を婉曲に表現するのに用いられる。しかし読めば読むほど怪しげな言葉なのである。

  1. 二重の疑問符?
    • 「いかが?+ものか?」ここには疑問符が二重についている。しかし両者の関係は不明確だ。二重に疑問を呈しているかたちなのだがこれでどうしてNOの表明なのか理解できない。
  2. 隠された鎧
    • では「いかがなものか」=控えめなNo、という意味だと認めよう。しかし政治家や官僚がこの言葉を使うときはたいてい「はっきりしたNO」としての局面での使い方が多い。しかし彼らは力を持つ立場であることを勘案して角を隠すためにこのような婉曲な表現を使うのだろう。だまされてはいけない。
  3. 普通の人は使うのはおかしい
    • 昔からエライ人には訳のわからない言葉使いをする人が多かった。これは多少意味不明の話をちりばめてわからなさ(=神秘性)を演出する効果を期待したのだと思う。しかし本当に偉い人は相手の立場に立ってわかりやすい言葉を選べるはずだ。だから庶民は真似をしてはいけない。

 「いかがなものか」は日本語の文法上語尾にこなければならない結語を棚上げにしてしまう。その上で結論をあいまいにしたままで、知らぬ間にNOと言う意志を滑り込ませることが出来るという点で為政者にとって都合の良い表現のだろう。こういう言葉は駆逐しなければならない。

 しかし外国語に訳するときどうするのか見てみたいものだ。