教える者と学ぶ者

 新年は物理学者の江崎玲於奈氏だ。元旦の初回に述べられていた「江崎の黄金律」を書き写しておく。

  1. しがらみという呪縛を解かない限り思い切った創造性の発揮は望めない
  2. 教えはいくら受けても良いが指導者にのめり込んではいけない
  3. 価値の低い情報に惑わされてはいけない。人間の脳の処理能力は限られているので選択された必須の情報だけに限定する
  4. 自分の主張を貫くために戦うことを避けてはならない
  5. 好奇心とみずみずしい感性を失ってはならない

ノーベル賞を取るためにしてはいけない五ヶ条」と言うタイトルはちょっと余計だと思うのだが自分にとっては第4条などは特に心しておくべきものがある。しかし最も気になったのは第2条。そういえば同じ趣旨の話をつい先日聞いたばかりだった。

 さてRock and Snowに安間佐知のインタビューが掲載されていた。彼は16才ながらクライミングのコンペでは大人に混じって上位の常連でこれから世界的なクライマーになることが期待されている成長株だ。そんな彼がクライミングを始めた頃の最初の指導者がこう言ったそうだ。

これからいろいろな人が教えるだろうけれど自分が納得しないものはやる必要がない

 指導者を選ぶためには自分をよく知ったうえで人の指導を受け入れなくてはならない。彼は最初から人の助言が自分にとって役立つかを考えて取捨選択して、多くのクライマーとの交流を通じて自分にとって良いものだけを受け入れて今のスタイルを築いてきたものと思われる。恐るべき16才。しかし学ぶ態度としては至極まっとうな事だ。そもそも先人を超えるためには誰も教える事の出来ない技や知識を自分の努力で手にしなくてはいけない。師弟関係に安住している者には出来ないことだ。これはまた教える立場にたる人間も知っておかなくてはならない。

 国体山岳競技少年男子決勝ルートにて。成人を含めても彼が最強ではないかと噂されていた。