経験値の引き出し

 先日の国際meetingのゲストに来ていた友人の女性とこんな会話になった。「学生やポスドクが顕微鏡で標本を見てもなにも変わった事を見つけられないのに、私が見たら面白いことがいっぱい見つかるのよ」。そういえばうちのbig bossも「学生が写真でもってきたデータだけでは結論は出さない。プレパラートをもらって自分で見ないと信じない」と言っていた。

 同じ映像が網膜に映っても頭脳が解釈する答えは人によって様々だ。私は友人の女性に対してこう答えた" because you have a lot more templates in your brain than your students." おそらく物事がよく見える人の脳には様々なパターンに対応した鋳型が用意されていて目に映った映像に対して瞬時に最適な鋳型を当てはめているのだと思う。鋳型は組織像であったり、数式であったり、棋士にとっての棋譜であったりする。訓練された人にとっては初めて目に映る像でも既視感をもってとらえられるのだとおもう。ではその鋳型はどのようにつくられるか?それは若い頃に積んだ経験の蓄積によって鋳型の数と幅が増えるのだと思う。経験値の蓄積量を30才までにいかに増やすか、これが次の30年間の豊かさを決めるのだろう。