推薦状の書き方メモ

 仕事柄推薦状(評価書)を頼まれる事がある。宛先は、1)就職の応募、2)留学先への応募、3)学振などへの奨学金への応募書類、などだ。こういう依頼を手早く、そつなくまとめるのは大事な実務能力だ。学生・部下の多い人や多忙を極める人などは申請者本人に原稿を書かせる事もあるらしいのだが私はそういうことはしない。推薦状は同時に評価書であり極秘の文書である。申請者本人にすら見せるべきではない、本人にとって書いてほしくない事も書かなくてはいけないことがあるからだ。
 多くの場合に推薦状に含めておくことをまとめておく。

  1. 申請者と推薦者との関係、本人に接した期間、どのような関係だったか(指導者、友人、同僚・・・)。
  2. 申請者の経歴について。推薦者と知り合う以前までの経歴について特筆すべき事(業績)があれば触れる。
  3. 推薦者から見た申請者の資質、研究能力。自分が指導した人物なら本人と共同研究者との貢献度についても明確に分けて述べる。
  4. 申請者の人柄、人間関係の持ち方について。>リーダーシップ、指導能力、気配り。
  5. 申請者の能力、よい資質が表れたエピソード。>良いセミナーをした、有力な人に好意的な意見をもらった、人柄を表す趣味など。
  6. 申請者が今後努力すべき点。受け入れ側が留意すべき点。>現時点では不足している点、を述べる。
  7. 申請者と推薦者との今後の関係。>就職するときに独立した研究プロジェクトを行えるか、もしくは推薦者が必要な支援を行えるか、などを明記する。

 原則として文章は肯定型で述べる。欠点についても「・・・・・が身に付けば一層成長することが出来る」などと書けば否定的に書かずにすむ。

 こう並べてみると推薦状とは良いことばかりを並べて褒めちぎったものになると思われるかもしれない。しかし読む方も慣れたもので書き方、書かれていないこと、から推薦者の意図を汲み取れるものである。

"He/She performed difficult experiments and produced high quolity data."
>実験能力は高い。(しかし実験を企画する能力は??)
"He/She is reserved person."
>控えめで協調性は高い。(しかし指導力は??)
"He/She is one on the best Ph.D. student I have ever mentored. "
>これまで指導した中で最高の学生の一人だ。(2−3人しか指導経験がないかもしれない)

 こういった推薦書を予備知識として実際に面接して確かめていくことになる。同時に推薦状を書いた推薦者も審査される訳だ。何通も書いていれば、「あの人の書く推薦状はあてにならない」という評判がたつおそれもある。評価する自信がない場合には引き受けない、という判断も大事だ。