Giro de Italia: 引導をわたす

 今日は久々に自転車通勤が復活。足はやや重いが快適。


 最近は夜にジロのレースのビデオを見ている。これでやっと14ステージが終わったところ。ツールが始まる前に終わりそうにない。


 さて14ステージはレースの最高標高点Stelvio峠2758mを越えるレース。ここで優勝候補のイヴァン・バッソが変調を来す。何らかの原因で胃腸をやられたらしく全くスピードが上がらない。峠の頂上までたどり着いたがそこで立ち止まってしまった。ここまでに大幅にタイムを失いすでに総合優勝争いからは脱落している。バッソのチームCSCは総合優勝一本狙いだったのでそこでもうジロの目標は失われた訳だ。エースライダーのつとめはチームの助けを得て結果(総合優勝)を出すことで単に完走することではない。


 この場合、監督が普通に判断すれば体力的、精神的なダメージをさけるためにバッソを棄権させ次のレース、ツールドフランスに備えさせるところだ。立ち止まったバッソは監督と何か話し合っている。もうやめてしまうのか?



 そこでアナウンサーと解説者の市川雅敏氏の会話が入る。「もしこれが若いライダーだったら監督が無理矢理にでもやめさせますよ。今後の精神的なダメージをさけるためです。」、といった意味の会話だったと思う。そう、走っている本人には引き際が見えない。だから経験のある指導者(監督)が判断して決定する。


 しかしバッソは結局再び走り出し黙々とゴールを目指す。どんな心境なのだろうか?結局表彰式が終わる頃にもまだゴールできなかった。


 ファンとしてはもうやめてほしいといいたいところだろう。なんで目標を失って、体力をすり減らしても走るのか?誰しも疑問に思うところだ。

 バッソはその翌日からも出走し続ける。しかも驚いたことに彼は休息日を挟んで回復し、17ステージでは優勝してしまう。これはライバルチームのマークが外れたからだともいえる優勝だが驚いたことに翌日の18ステージでのタイムトライアルでも優勝するのだ。個人の実力が数字に表れるTTでの優勝は彼の体調が完全に戻ったことを示している。


 Stelvioの頂上で棄権しなかったこと対する疑問への回答をバッソは二つのステージ優勝で示した。これでバッソは前向きの気持ちでツールドフランスに向かうことができる。一つ間違えば大きな傷を残す事態を彼は最高の形で挽回した。バッソはすごい選手だと思う。


 彼は28歳、選手として最高潮の時期にさしかかっている。大人の選手の判断に対してCSCのリース監督は信頼で答えたのだろう。選手の判断を尊重するのか、それとも監督としての判断を通すのか?指導者としての見識と判断に簡単な答えは見当たらない。結局は普段からの選手との信頼関係と、選手の実力の把握が大事なのだろう。