油絵の具の輝き

 兵庫県立美術館で行われているアムステルダム国立美術館展に行ってきた。アムステルダム国立美術館の改修に併せて世界を巡回して収蔵作品を展示しているが「日本では兵庫県だけ」とのふれこみだ。いずれも良い作品ばかりだが自分が特に気に入った3点をあえてあげておく。

  • グラスに活けた花のある静物」ヤン・ダーフェッツゾン・デ・ヘーム
    • 花全体にわたって小動物でいっぱいだ。チョウが舞い、カタツムリが這う。毛虫やちいさな昆虫もたくさんとりついている。花を鑑賞するだけでなく花が提供する昆虫の住みかを丸ごと室内で鑑賞しようということだったのだろう。もっとも虫の付いていない花などあり得ない時代だったのだろうが。花を対象にした静物画はいくつかあったがいずれも虫だらけだ。原寸大で、近くに寄ってはじめて気づくような小さい虫が多い。さて虫は前部で何匹いるでしょう?てな楽しみ方も出来たんだろう。娯楽の少ない当時、大人も子供も様々な楽しみ方が出来るように一枚の絵に数多くのメッセージと物語を織り込む工夫をしたのだろう。現代では「ウォーリーを探せ!」にこんな遊びが引き継がれている。この作品は特に色遣いが鮮やか。
  • 恋文ヨハネス・フェルメール
    • 今回の展示の売り物で、最後の一枚だった。それまでの絵に比べて黄色の使い型が独特で、またドアから覗き見る構図が新鮮だ。確かに評価されるだけのものはある。解説を聞くと背景にある船の絵が恋愛を象徴するものだそうだ。俳句は季語を知ることが必要なように絵画にも作者の意図を読みとる鍵が書き込まれているということらしい。

 さてこれらの作品を見て感じたのは油絵の具の品質の高さだ。いずれも400年近くの年月を経てきたとは思えない色と輝きがある。もちろん高度な修復技術の助けがあるものと想像するがそれでも実物の質感はデジタル画像や複写では再現不可能だ。やはり美術館に出かけて実物を見るべし。

 日曜午後の会場は会場は人出は多いが礼儀正しい方ばかりで落ち着いて鑑賞することが出来た。

追記:トップの写真は美術館外壁を這う蔦だ。上に、そして明るい方向を目指すので斜めに伸びている。しかし外壁を走る水平の切れ目に遭遇するとそこに沿ってしばらくのびた後再び上を目指す。ニューロンの伸長のような姿が面白く写真を撮った。