良いプレゼンを聴きたい!

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良いエントリー。口頭でのプレゼンテーションは話す人にも聞く方にとっても貴重な時間を共有する機会だ。聞き手にとって「聞いて良かった」と思わせれば成功だ。ポスター発表は通り過ぎればいいのだが、トークの場合は聴衆の時間を頂いて話す機会を与えられる。「聴きに来るのではなかった」と思われたら負の評価を残す羽目になる。

 先日あるシンポジウムに参加した。これは研究発表と共に若手PIのアピールの場として設定されたものらしい。推薦、もしくは応募から選ばれた人たちが20分与えられて発表する。時間の使い方と話の組み立て方が演者によって様々。データを目一杯詰め込んで話す人やラボの活動を全部話そうとする人。そりゃぁ消化不良を起こしちゃいますよ。イントロの使い方も難しい。はしょりすぎるとデータが生きないし、冗長だと聴衆は興味を失って眠り出す。

 島岡氏のおっしゃる"relate"は「つかみ」と言い換えてもいいだろう。うまくrelateするためには聴衆が誰で、何を求めているかを知る必要がある。最初に聴衆の興味を引きつける工夫のある講演は緊張感が持続して良いものが多かった。

 "story"を構成する研究手法とデータの選択は大事だ。この部分はプレゼンターの個性が良く表れる。データが一杯あればいいものではないが、品質が高いことをアピールする必要最小限のスライドは必要だ。時間制限に応じて後はまとめと概念図でまとめるのも手だろう。スライド枚数を限定して数分間でポスター発表の宣伝をしてもらう形式の発表をしてもらう事が最近多くなってきたのだが、20−30分の講演よりもかえって印象深い事が多い。削りに削ってエッセンスだけを選ぶことで研究の本質がより明快に浮かび上がるのだろう。

 "Context"はtake home messageに相当する。聴き手は話し手が期待するほどにはプレゼンの内容を覚えてはいない。論文とは違って口頭のプレゼンでは瞬間的な印象で全体的な評価が決まってしまうことがおおい。簡潔にまとめたサマリーは評価に対して大いに影響すると思う。

 島岡氏のエントリーで紹介されていたPaul Rothemundの5分間プレゼンテーションはエンターテイニングだがハイテンポの早口で話し方としても聞き方としても日本人には向いてないと思った。もっとスライドを単純化してゆったりと話しても同じだけのインパクトを与えるトークは不可能ではないと思う。

 日本人向けの英語プレゼンテーション講座をお世話した事があるのだがそのコメントの中に「日本人のプレゼンの方がわかりやすい」というものがあった。ネイティブスピーカーは言語的に「相手がなぜ理解できないのか」についての理解が不足がちだ。英語を母国語としない我々は英語講演がわかりにくかった経験を数多く経験している。そんな聴衆にエッセンスを伝える工夫は欧米人にも、他の非英語圏の人々に対してもアピール出来る講演が可能なはずだ。