Science

フィールズ賞

数学者の最高の栄誉、だとは理解していたのだが改めて調べてみた。International Mathematical Union (IMU)が選出する。 The Fields Medal is awarded every four years on the occasion of the International Congress of Mathematicians to recognize outs…

グレゴリー・ペレルマン

http://www.asahi.com/international/update/0822/019.html この人、ポアンカレ予想を証明するという数学上の大業績を成し遂げてフィールズ賞の受賞者に選ばれながらも受賞を固辞したという逸話で一躍有名になった。さらにロシアでの数学者としての職まで辞…

Gift

実験に抗体が必要になったので金曜の夜、帰り際にリクエストのメールを三通送信した。数時間も経たないうちに次々と返事があってすぐに送ってくれるとの事。二件は私の大学院時代とポスドク時代の知人の同業者。近況などと共に快く送ってくれるとの返信。も…

悪魔の証明

最近ブログを休んでいるうちに国会では民主党の永田議員が偽物のメール情報にもとづいて質問をしたためにえらい騒ぎになってしまった。問題は彼が証拠能力などないメールのコピーを元に自民党の武部幹事長を追求したためで、その後はメールの裏付けをとらな…

共存の知恵

夕食で交わした英国人との会話。彼は昼休みセッションをサボって姫路まで行ってきたらしい。途中で寄った山の上には神社とお寺が隣同士だったそうだ。 私:「日本では異なる宗教が平和的に共存することに何ら問題はないのですよ。」 英国人:「日本人はcompr…

エピローグ

J Biochem (Tokyo). 2003 Feb;133(2):155-8. Discovery and prospect of protein kinase C research: epilogue. Nishizuka Y. 西塚泰美先生はprotein kinase Cと脂質シグナリング機構の発見で高名な方だ。昨日から行われているシンポジウムでは先生の足跡に…

捏造を防ぐシステムは可能か?

最近のデータ捏造が連発する状況に対しての防止策の議論が始まった。データ捏造はよそさまから頂いた研究費(多くは国費)をつかって嘘をでっち上げて世間をだます行為なのでスポンサーに対する詐欺行為であり、同業者に対してはルール違反だ。peer reviewシ…

捏造騒動の教訓

韓国のヒトクローンES細胞捏造はメディアや国家まで巻き込んでえらいことになった。この事件を教訓として関係者が学ぶべきことが明確になったことだろう。 論文発表の間違いをなくす方法はない 今回のケースは「真っ赤な」嘘だった。著者は間違いのない完璧…

嘘と過ちに気づく知恵

研究成果の捏造問題が話題をまいているが私のような研究を生業とするものにとっては「嘘をつかれて迷惑千万」というところと「万が一にも糾弾を受ける立ち場になるかも」という二重の怖さがある。もちろん確信犯的な捏造は言語道断だが、実験科学の世界では…

捏造されたクローン

ここしばらくメディアをにぎわせていた韓国の黄禹錫(ファンウソク)教授らによって作成されたとする患者からの体細胞核移植によるES細胞の真偽について、ソウル大学当局の調査委員会からの中間報告がでた。報告された11個のクローンのうち9個については…

ゆらぎとよろめき

ゆらぐ遺伝子、よろめく細胞。 昨日の論文セミナーに触発されて考えてみた。 生命は熱力学的ゆらぎを制御して高分子を配列することで細胞という精緻な機械を構築してきた。しかしゆらぎは完全に克服されたわけではない。近年では細胞の解析技術が進み、単一…

二股は許されるのか?

Nature. 2005 Nov 3;438(7064):94-8. The transcription factor Engrailed-2 guides retinal axons. これはまた驚きの論文だが悩ましくもある。神経科学は門外漢だが考えてみよう。

二股 その2

寝ながらもう一度考えた。結果は2点にまとめられる。

科学に対するお国柄

昨日のセミナーはアメリカにおけるヒト幹細胞研究の現状についての話だった。要点は、以下の通り。 アメリカでは胎児に由来するヒト胚性幹細胞を利用した医学研究は国によって厳しい制限がかかっており、公的機関において実質的に研究不可能な状態である。理…

発見とは何か?

Nature 437, 560-563 Dependence of Drosophila wing imaginal disc cytonemes on Decapentaplegic 上記の論文を読んで考え込んでしまった。まずはサマリー ショウジョウバエの翅成虫原基には膜結合型GFPによって標識される細胞突起がある。著者らは以前この…

評伝アインシュタイン

評伝 アインシュタイン (岩波現代文庫)作者: フィリップフランク,Philipp Frank,矢野健太郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/09/16メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る アインシュタインと同時代の物理学者フィリップ・フランクによる評…

開国

外国人のPD候補を面接した。そしたらラボのメンバーにこう聞かれた、「この人が来たらセミナーは英語になるんですか?」。当たり前である。 日本の学会の英語化が叫ばれて久しい。しかし一部の先進的な学会を除いて英語化は遅々として進まないのが現実だ。私…

模倣と独創

研究者には独創性が求められる。では独創性とは一体どうやったら身に付くのだろうか?「我が輩はゼロからの出発で独自の理論を立ちあげた」なんて主張の本のタイトルを見かける事がありますが、科学の世界ではそんな事はまずあり得ません。現代科学はアリス…

異常を通じて正常を知る

大隅典子さんの日記にこんな記事があった。 2年前のことになる。 とある研究費のヒアリングで自分の研究計画のプレゼンをした直後、選考委員の方から開口一番に「(精神疾患のモデルとなる)病気のマウスを調べて、どうして脳の正常な発達を理解することに…

捏造:誰が裁く?

科学論文のデータに再現性のないものがふくまれていたか?そのデータは故意に捏造されたものであったかどうかの判断は容易ではない。グレーゾーンが多く判断には証拠の収集と専門家による科学的判断が必要とされる。 研究の内容に疑義が生じたときに対応でき…

真贋の鑑定

論文の信頼性に問題、遺伝子研究で生データなし…東大 東大・産総研の多比良教授と川崎広明助手らのグループの論文に疑惑あり、という以前から噂にはあった問題についに東大当局が踏み込んだと言うニュース。当事者に追試を行って再現性を示すことを依頼して…

Fellowship Application

よくとおる(?!)研究費申請の出し方、についてはトロントの伊倉先生がご自分のBlogに書いておられる。私は自分の申請(論文も含めて)を通すことさえ四苦八苦しているのだがその一方で審査する立場になる機会も増えてきた。 学振特別研究員の審査をする機…

キャリアパス

ではリーダーを目指すことだけが科学者の道だろうか?いやそうではない。理想のサイエンスを実践するのに必ずしもリーダーにならなくても良い場合もある。リーダーの重責がかえって研究面にマイナスに響くことも人によってはあるだろう。共働きなどのケース…

Step by Step

ある大学教官のブログに1万人を超したポスドクを何とかしてほしいという意見があった。柳田先生の大人気Blogでもポスドク問題が語られるたびに凄い数のコメントが殺到している*1。ポスドク中のGardener君のサイトでもこんな記事があって任期制研究職に就い…

fortune-tellers

MicroRNA expression profiles classify human cancers Nature 435, 834-838 (09 Jun 2005) セミナーでこの論文を読んでいたらふとこういったお話が頭に浮かんできた。 昔ある港町の裏通りを顔色の悪い中年男がとぼとぼと歩いていた。角を曲がるとそこにあっ…

micro RNA

本日のJCでNさんがRNAiのレビューをしてくれた。進歩が激しすぎて自分だけではフォローしきれない。最近はガン細胞のmicro RNA、細胞周期のmicro RNA、幹細胞のmicro RNA、○○のmicro RNA、△△のmicro RNA、等々RNAのオンパレードだ。極めて重要な、謎の多い現…

猩々蠅

同業者の集まる研究集会に行ってきた。二年に一回行われるのだが前回にもまして参加者が多く、活気にあふれた集まりだった。感想をいくつか書き留めておく。 発表の内容は前にも増して良くなっていたと思う。口頭発表が数多くあったがよく準備された話ばかり…

錬金術

「現代の錬金術師」と名乗る物理学者の講演を聞いた。矢野氏は加速器を用いて元素と元素を衝突させて新しい元素を生成させる事で物質誕生の謎を探る事を目的にする研究者である。生物学の研究者に語るということで「二日間徹夜状態でしたよ」といっておられ…

Theory vs Principle

「生命情報システム」というグループの会合に行ってきた。これはゲノム科学を共通基盤として情報科学者(bioinformatician)と生物学者(biologist)がノウハウを交換して生命システムの理解に貢献しよう、という趣旨のグラントである。大量の遺伝子配列情報があ…

暗黙知の次元:批判

暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫)作者: マイケルポランニー,Michael Polanyi,高橋勇夫出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2003/12/01メディア: 文庫購入: 24人 クリック: 126回この商品を含むブログ (76件) を見る宿題として残っていた「暗黙知の次元」を読み終…